その様子を目で追う泉さんが、再び腰を下ろしながら言う。


「社長のお客さんか。綺麗な女の人だね。女優さんみたい」

「家具ブランド〝SHINDOU(シンドウ)〟を経営する社長のご令嬢、進藤 未和子(しんどうみわこ)さんですよ」


泉さんに続いて、私たちの向かい側に座る鬼頭さんが、マウスを動かしながら教えてくれた。

SHINDOUというと、国内外で家具やインテリアの企画、販売を行っている大手企業だ。高級感のあるオシャレな商品が人気だと、私でも知っている。

その社長令嬢が、尚くんとなにかしらの関係があったとは……。


「二十九歳にして広報部のトップで、バリバリのキャリアウーマンだとか」

「へぇ~、よく知ってますね」


意外にも情報通な鬼頭さんに、泉さんは目を丸くしている。鬼頭さんはパソコンからこちらに目線を向け、やや声を潜めて続ける。


「私くらいの年数を勤めている社員なら、おそらく皆知っています。彼女は久礼社長の──」


そこまで口にしたとき、別のテーブルのほうから「鬼頭さーん」と呼ぶ声がした。おそらく、ダンジョンのホームページの最終確認を行うのだろう。

私たちに無表情で「すみません」と告げた彼女は、さっさと腰を上げて向かっていってしまう。