冴木さんのアプローチに心を乱されつつ、三日間のお盆休みに突入した。尚くんのご家族とは都合が合わなかったため、ご挨拶は延期になり、私は学校の課題に明け暮れた。

そうしてあっという間に訪れた金曜日、私は午前中だけ出勤している。

明日はいよいよ決戦の花火大会だ。そのことを考えるとドキドキソワソワして落ち着かないが、仕事はミスがないようにしなければ。


そうして業務に勤しむこと数時間。物置デスクでパソコンと向かい合っている社長様と、ミーティングをしている冴木さんを若干気にしながら、事務作業をしていたときだった。

オフィスのドアが開き、来訪者が入ってくる。反射的にそちらを振り向いた瞬間、私は驚きで目を見開いた。

凛とした雰囲気を纏って現れたのは、一週間前レストランで尚くんと話していた、あの女性だったから。

なんで、ここに!? 淡いピンクベージュのレディーススーツに、ビジネスバッグを持っている姿からして、仕事中なのだろうとわかるけれど……。

呆然とする私の隣にいる泉さんが、案内をするために腰を上げる。しかし、それよりも早く、尚くんが直々に彼女を出迎えた。

仕事相手に対する、いたって普通の挨拶を交わしたあと、ふたりは打ち合わせを行うスペースへと向かっていく。