恥ずかしくて背けていた顔を彼のほうに向ければ、長いまつ毛が伏せられている。私は唖然とした。

なんと、この中途半端な状況で眠ってしまっていたのだ。

信じられない。どうしてくれよう、このやり場のない悶々とした気持ちと、身体の熱は……!

この酔っ払いが!と、心の中で叫んだことは言うまでもない。結局、彼はそのままソファで寝かせ、私はいそいそと自室に向かったのだった。


尚くん、昨夜のこと覚えているのかな。どんな顔して会えばいいんだろうか。

しばらくベッドの上でゴロゴロして悩んでいたものの、尚くんは土曜日の今日も仕事があるらしいので、のんびりしていられない。意を決してベッドから抜け出した。

そうっとリビングダイニングに向かうと、昨日のままソファで寝ている旦那様の姿がある。

まだ寝ていてくれてよかった。とりあえず朝食の準備を始めて、この人が起きたときにどうするかはそのとき考えよう。

勝手に蘇ってくるキスの記憶をひたすら頭の隅に追いやりながら、胃に優しい雑炊を作り始めてしばらく経ったとき、ソファのほうで動く気配がした。