スマホのアラームが鳴り、重い瞼をゆっくりと持ち上げる。

次第にクリアになってくる視界に映るのは、自分の部屋の天井と、明かりが差し込むカーテン。

いつもとまったく変わらない朝。ただひとつ違うのは、唇に甘い余韻が残っていること。

アラームも止めずぼんやりとしたまま、その唇に触れてみた。

……まるで腫れているみたいにじんとする。そんな気がするだけだけど、そのくらいたくさん、尚くんは甘噛みするようなキスをし続けた。

そんなふうにされたら、もしかしたらこのまま一線を越えてしまうかもしれない、と予感するのは普通のことだろう。

尚くんにならすべてを捧げても構わない。彼に好きという感情があってもなくても、私は大好きなのだから。

私の拙い舌を絡め取っていた彼の唇が、首筋に移動したとき、その予感も心臓の鼓動もさらに大きくなって、私は覚悟を決めた。


『ひゃ、あ、んん……! っ……ん? 尚、くん?』


くすぐったさと快感で身をよじらせていたのだが、どうも様子がおかしい。首筋を軽く吸ったり、舌を這わせたりしていた彼が、いつの間にか動かなくなったから。