そうしている間に、濃いボルドーの液体が揺れるグラスが差し出される。

それを手にする姿も絵になるな、と懲りずに見惚れていると、下ろした前髪がかかる瞳が意地悪っぽく細められる。


「皆の雰囲気に飲まれて酔っ払うなよ」

「そこまで弱くないです」


尚くんはツッコむ私にクスクスと笑い、頭をぽんと撫でて皆の輪の中に戻っていった。

思い思いに立食を楽しんでいる皆を横目に、私は泉さんと鬼頭さんが座っているソファー席に戻る。

牛丼を食べに行った日以来、鬼頭さんとはお互いに壁がなくなったかのごとく、気を遣わずに接することができるようになった。

泉さんもそれにつられるようにして鬼頭さんと話すことが多くなり、ここ最近は気がつくと三人でいたりする。

今もそれぞれ料理を取ってきて、三人でシェアしているのだ。周りからは異色の組み合わせだと思われていそうだけど、私は結構楽しい。


「キョウちゃんもあと少しで成人かー。早く一緒にお酒飲みたいね」


オレンジジュースを見て泉さんがにこやかに言い、私も「ですねー」と応えた。

しかし、実は一度だけお酒を飲んで酔っ払ってしまったことがある。尚くんと暮らし始めてすぐの頃だ。