「うん、楽しかったの。鬼頭さんと冴木さんと、三人で食べに行ったんだけどね」

「冴木?」


彼の名前で反応を示した尚くんは、ぴたりと動きを止めて、わずかに眉根を寄せる。


「なんで冴木がいるんだ」

「なんでって、チームメンバーだからに決まってるでしょ」


なぜか声を強張らせる尚くんに、私は当然だという調子で返した。

冴木さんがいたら、なにか悪いことでもあるんだろうか。別に、彼とふたりきりで食事しに行ったわけでもないのに。

はっ……まさか、嫉妬? 尚くん、自分がのけ者にされたみたいに感じているとか?


「尚くんも一緒に行きたかったの?」

「そんな子供みてーなヤキモチ焼くか」


真面目に問いかけたのに、彼はあからさまに脱力し、目を据わらせてツッコんだ。

じゃあなによ、と他の理由を探ろうとしていると、彼は不機嫌そうな顔で「ただ……」と続ける。


「お前が、他の男の匂いつけて帰ってくるのが気に食わないだけだ」


男の、匂い?

まったくもって予想外の言葉が飛んできて、目を点にした私は、バッと自分の袖に鼻をくっつける。