人生最悪の日、私はひとりぼっちになった。

……いや、なるはず、だったのに。


『結婚しないか、俺と』

『これからもっと、ずっと俺がそばにいてやる』


いつも私を優しく見守ってくれていた瞳に、芯のある力強い光を湛えて、彼はそう言った。

恋愛のなんたるかも知らなかった私だけれど、〝この人と一緒にいたい〟という、強い気持ちだけは本物だったと確信している。


あの日、私はひとつの愛の形を知った。

肌にまとわりつく空気はぬるくて、雲間から顔を覗かせた月が綺麗な、十八歳の夏の夜のことだった。


 * * *