「カン太郎…」

真っ青な顔で立ち尽くすカン太郎が悲痛な声で言った。

「ケンは生きてても幸せじゃないんやないかなぁ?
布団に寝たままで、くだみたいなん繋がれて、一言も話さん。
おらはそんな人生嫌だ。
死んだ方がマシや」


「…カン太郎はケンに生きていてほしいと思うか?」

「当たり前や!」


「…生きるか死ぬかは自分で決めれるものじゃない。わし等は生かされておるのだ。

生きる者は自然の一部であり、桜の花が散るように一枚一枚死んで行き、それは大地に栄養を与えまた来年には新しい花が咲く。

ケンは生かされた」


おらは黙って頷いた。


「カン太郎、ケンの姿を見なさい。わしにはケンが皆の生きてほしいと思う気持ちの塊に見える。
愛されて幸せじゃよ。

…カン太郎はわしが死んだら寂しいか?悲しいか?」


「そんなの…嫌だ!」



「わしも同じ事よ。
…ケンもな。

ケンもみんなと離れるのはきっと嫌じゃ。

大切な人がいる。それだけで生きたいと思うもの」