丸々がいなくなって、おらの小さな明かりが消えた。


もうこんなダメなおらを無条件に慕ってくれる丸々はいない。


『カン太郎…ここに座りなさい』



じぃ様はおらを呼んだ。



『カン太郎、丸々の死を忘れるな。死ぬという事、愛する事、丸々が教えてくれた事を忘れてはならんぞ』


『はぃ…じぃ様…』


おらは鼻水と涙でぐちょぐちょになった顔を拭いた。

『でも…お…おらの…せいだ…』



『何故そう思うんじゃ?』


『夢で見たのに…あんなに強く思ったのにおらは丸々を見てやれなかった!!もっともっと!』



『カン太郎。よく聞くのじゃ。後悔するのは人間だけじゃ』



『人間だけ?』



『そうじゃ。犬が過去を振り返る事はないと言われている。


丸々はどんな時も全力で愛し、全力で遊び、最後まで全力で生きようとした。


人間はどれだけ愛しても愛し足りず、失う悲しみは計り知れない。


それでも生きて行かねばならぬ。生きていれば出会い、別れの繰り返しだ。


丸々は愛する事は時間ではないとカン太郎に教えてくれたはずだ。


沢山の人を愛し愛され、丸々のように、死を迎えた時に泣いて惜しまれるような人になりなさい』