あの夢の中はリアルすぎて、今でも鮮明に思い出す。

丸々がいなくなる事が怖くて仕方なかった。



丸々は事故だった。


村の宴会で村中が騒いでいた最中、ケンもいた。


あの、おらが嫌いな松おじさんがハメを外した拍子に、鉄パイプが丸々の頭に落ちた。


おらは最初なにが起こったのか分からなくて、ただ立ち尽くした。


『丸々!』


泣き叫ぶケンのかぁさんと、慌てて医者を呼びに走ったケン。


『丸々!』


一瞬スローモーションに見えたんだ。


丸々はヒクヒクして目を閉じようとした。


その瞬間、おらは思わず力なくさけんだ。


『丸々?!丸々!』


目を閉じちゃダメだ!


丸々は目を開け、おらを見てた。 


だけど、本当に心臓が止まったのはこの時だったんだろう。


目を開けて丸々は死んだんだ。おらが名前を呼んだからかな。


それからケンは戻ってきた。医者はこの町の下町にいると言って。


意識のない丸々をおらは抱えたまま、走った。


『まだ暖かい』


誰かがそう言ったけど、まだ暖かかったのはおらが暖めていたからだ。


だけど本気でおらは死ぬとは少しも思ってなかったんだ。


身近で死を感じたのはこれが最初だった。


病院に着いて心臓マッサージをしている時も死ぬはずがないと本当に思ってた。

医者がおら達の様子を伺い、まだ続けますかと言って、じい様がもういいですと医者に答えた。


心臓マッサージの器具が取り外されていき、初めて丸々が死ぬと思った。


どうして止めてしまうの?まだこんなにも息をしそうなのに止めたら本当に死んでしまうよ。


そしたら涙が溢れて止まらなくなった。


丸々が死んだのはおらのせいだ…。


おらがちゃんと丸々を見てなかったから。


強く抱き締めて冷たくならないように毛布に包むと、医者は言った。


暖めては腐るのが早くなると。おらは全てが悲しくて泣き叫んだ。