「おい、そら…さっきと態度が違うじゃないか⁈俺が千花にキスしたのが気にくわないのか?」
反応を見せないそらくんに、彼は業を煮やした様子で両手でそらくんの脇を掴み目の高さまで持ち上げ見つめていた。そらくんは大きな欠伸をするだけ…
「お前、なかなかいい性格してるな!俺なんか相手にしてないって顔だが…よく聞け…どんなに千花がお前を大事だと言っても、俺は譲る気はないからな」
訳のわからない宣言をそらくんにして、そらくんをソ下ろした彼は、私の元まで戻ってきて、視線を合わせるようにしゃがみ、ご機嫌な様子で微笑んでいた。
「戸締りちゃんとしろよ」
コクンと頷くだけの私。
この時の私が、どんな表情をしていたのか想像できないけど、間抜けだった気がする。
「来週、待ってるから逃げずに来いよ」
いつもの私なら『逃げないわよ』と憎まれ口が出てくるところなのに、頷く事しかできないほど、突然の出来事にまだ思考が追いついてこないでいた。
苦笑した高橋さんは私の頭をぽんぽんと撫でた後、前髪を避けたおでこにチュッと音を立てるキスをし『おやすみ』と甘さを含んだ声で言言い残して帰って行った。
なんなの?
思い出してきて、声にならない声で叫んでいた。



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