男がそちらを向く。手を取り返して、毛布を手繰った。
「仕事、休みなの?」
「あー、いや、ある」
「じゃあ早く行きなよ」
歯切れの悪い返事をして、男が首の後ろに手を当てる。なんだ、タクシーのお金でも無いのか。
「シャワー借りて良い?」
「良いよ、タオルもあるの使って」
「ありがとー」
本当に手慣れてる感じ。男が寝室を出たのを見て、近くに置かれた財布から札を出す。バーの代金も払ってくれてたよね。
男のジャケットにそれをねじ込む。気が治まって、やっと落ち着く。毛布を被ってベッドに横たわる。
ようやく眠れた。



