王女にツバメ


空が白み始めた頃、男は起きてこちらを確認した。頭は冴えているのに体が動かなくて、顔の心配とかしてなかった。

「ごめん、寝てて」

こちらが一睡もしてないのを感じ取ったのか、男が謝る。

「いやいや、起きててとか言ってないでしょう」
「おねーさんのベッドを占領してた」
「大丈夫だから。あと、あんまりこっち見ないで」

その若さを前に、今更崩れたメイクが恥ずかしくなる。
隠した片手をまた取られる。男の顔が覗く。

「なんで? どっか痛い?」
「じゃなくて……。時間! 帰らなくていいの?」

時計を指差した。電車はもう動き始めている。