王女にツバメ


肩を優しく掴まれ、仰向けに倒される。

上に琉生が来た。ぽたりと髪の毛から滴が落ちてくる。

「あ、起きてた」
「髪の毛、濡れてる」
「裏葉さん、やって」

腕を伸ばすと、それに合わせて屈んだので水滴を拭ってやる。そのまま顔が近づき、唇が重なりそうになる。

重ならなかったのは、あたしが顔を背けたからだ。

「水、冷たいから」

目元を腕で覆いながら言う。
なんだか泣きそうだった。でも、泣けない。

「裏葉さん? どうしたの」

腕を掴んで離そうとする琉生が困惑したような声を出す。

「何でもない、ごめん」
「なんでもなく無いでしょ」