紙幣だ。お札。 でも財布は普通に持っていたはずなのに、どうしてこれだけ? 何か違和感を覚えて、それから携帯の画面を見た。 『ひかり』 ……女の名前。 こんな時間にかかってくるなんて、緊急の用事だろう。女性からかかってくるなんて、更に。 でも、あたしは琉生を叩き起こすことが出来なかった。 その内に電話は切れた。 携帯とお札をジャケットに戻す。 毛布を被って、ひとつ想像をする。 琉生はあたしみたいに寂しそうな女を見つけて金を貰い、渡り歩いている。さっきの『ひかり』もその内の一人。