「きょー、くん⋯」

思わず出た声にきょーくんも私の存在に気づきこっちを振り向いた。


「梅⋯」

決して高くない、だけど低すぎもしない心地の良い声が鼓膜を震わす。



“梅”って呼び名は特別だった。

小さい頃からきょーくんだけがそう呼んでいた。

きょーくん以外にはお母さんにもお父さんにも友達にも、他の誰にも許したことのない呼び名。


「梅」ときょーくんに呼ばれる度、心が温かくなっていた。

きょーくんは昔からずっとずっと、私の特別だった。