腕を引かれた事で近くなったきょーくんとの距離。


上を見上げればきょーくんの綺麗な顔が視界に映る。




「俺この子と帰るから」


「えっ⋯」



きょーくんの言葉に驚いたのは私だけじゃない。



「その子と⋯?」


まりなさんもだった。





「そう。だから無理」

「えっ、でも私も恭也と帰りたいし⋯。というかその子って噂の⋯?」

「噂はよく知らないけど、幼なじみ」


表情を変えずにそう言ったきょーくんに「なら、」とまりなさんは続ける。



「幼なじみなら別に一緒に帰らなくてもいいでしょ?私と帰ろうよ。幼なじみちゃんもいいでしょ?」



そう言いながら私の方を見るまりなさんの目からは敵対心みたいなものを感じた。

私の勘違いかもしれないけど、きょーくんの幼なじみをしていればそういう目を向けられるのは慣れっこで、それが私に対する敵対心や嫌悪感だという事が分からない程馬鹿じゃない。




「ただの幼なじみでしょ?」



きょーくんではなく、私に向けて言ったまりなさん。



確かに私ときょーくんはただの幼なじみだ。
私の片思いだ。




「恭也と帰っていいよね?」


まりなさんはきょーくんの彼女。
その言葉に頷くしか私に選択肢はない。