「……本当にごめんね」
弟が迷惑をかけてごめん。 というつもりで謝ったら、時雨くんは苦笑気味に笑ってみせた。
「気にしなくて大丈夫だよ。 つーか、俺の方は延期にするつもりだったから」
「えっ……?」
「ほら、だいぶ雲が出てきただろ? それはそれで綺麗だけど、俺が撮りたい感じとは違うんだよね。 だから延期」
……そっか。
残念そうな顔の理由は、それだったんだ。
「せっかく来てくれたのに、俺こそごめんな?」
「あ……ううん、全然。 ていうか、私としては撮影が無くなってホッとしたし……」
「あはは。 お前、撮られるの嫌がってたもんなぁ」
また苦笑気味に笑った時雨くんは、そっと携帯を取り出した。
カメラを海の方へ向け……シャッターを切る。
「でもいつかは撮りたいな。 後ろ姿だけじゃなくてカメラ目線の写真とかもさ。 SNSにはアップしないけど、個人的に持っていたい」
「えぇ…普通に嫌なんだけど……」
「そう言うなよ。 好きな奴の写真は保存して取っておきたいって思うのは当然だろ?」
……え?