出来上がった水割りを、「どーぞ」と普段使用の声でコースターの上に置く。

と、


「藤子、あのさぁ、」

「ちょっ……お店ではジュリって呼んでよっ」

「誰も俺たちの会話なんて聞いてないって~」

「だけど!店で本名はやめてってば……」


男にぐっと近付き、小声ながらにも強い口調と目力で訴えると、


「あー、はいはい。以後気をつけます」


気をつける気持ちが本当にあるのか無いのか……という男の言葉。

この男のそういう性格にはもう慣れっこ。


「……で、何の話だっけ?」

「あー、今日さ、この後お前の家に行く予定だったじゃん?ちょぉっと、ヤボ用が出来て行けなくなった」

「ふーん。どうせ女でしょ?」

「あ。バレてた?」

「何年アンタと付き合ってると思ってんの」

「さすが、トーコ……じゃなくて、ジュリちゃん~!」

「遊びもほどほどにしないと、いつか新聞の三面記事欄辺りに載ることになるわよ」

「yah×oのトップ飾っちゃう的な?まぁ、そん時はそん時だよね」

「……バカ」


こんな軽い会話も慣れっこ。