かわいい戦争




「……っ」


「な・ま・え・は」



これ、強迫じゃない!?



本当は名前を教えたくない。個人情報だし、教えちゃったらこれから無関係でいられないし。

何より日常を脅かされるの嫌だ!怖い!


だけど、彼らと他人でい続けることが不可能なら、自己紹介してもしなくても結局おんなじだ。


嫌とか怖いとか、どうせ彼らは……というか高身長の男の子は、1ミリも考慮してくれないだろうし。



これは、もう、不可抗力だ。




「ひょ……ひょの、きゃひり、でふ……」


「ああ?なんつった?」



これでも精一杯頑張ったよ、わたし!!

滑舌がどうとか関係ない状態なのに、頑張って名乗ったよ!?



「リッキーの手、邪魔。せっかく名乗ってくれてるのに」



美人な男の子が、高身長の男の子の手を剥がしてくれた。


両頬が楽になった……。

美人な男の子、ありがとう!



「こいつが下向いてたから、俺がわざわざ……」


「あー、こいつは放っておいて、改めて名前教えてくれない?」



舌打ちをする高身長の男の子を適当にあしらい、学ラン肩かけ男が優しく促す。


明らかに不機嫌になった高身長の男の子が恐ろしくて、今すぐ立ち去りたい気持ちでいっぱいだ。




「素野海鈴、です」


「海鈴、ね。北校なんだっけ?」


「は、はい。北校1年です」


「俺も1年!璃汰と同じクラスなんだ」




同い年かそっか、と嬉しがるのは低身長の男の子。


璃汰と同じってことは、桜彩学園の生徒?




「俺の名前は、草壁 勇祐(くさかべ ゆうゆう)。勇祐って呼んで」


「ユウユウ……。わ、わかりました」


「同い年なんだしタメでいいよ」