かわいい戦争



足がすくむ。


でも怖いからって、仕事を放りだすわけにはいかない。



「行こう。行ってやろう!」



喧嘩腰な意気込みでもしなくちゃやってられない。



これが偶然だろうとそうでなかろうと、これは仕事。あくまで仕事!


それに、受け取る人が彼らだとは限らないしね。



気合いを入れて、扉の前まで近づく。


この気合いが無駄にならないといいけど……。




コンコン、と軽く2回。
ドアノッカーで叩いた。




ギィ……。

重厚な扉が軋みながら開かれる。



「あ、あのっ!わ、わたし、出前を……」


「あ」



まいど。

その定番セリフもド忘れするくらいテンパってるわたしに、開口一番返ってきたのは、たったの一音。


しかも割と高めのトーン。



「ほんとに来た」



わあ……ほんとに出ちゃった。



扉の奥から姿を現したのは、あの美人な男の子で。


また会っちゃった。

関わっちゃった。



「……こ、これ、お待ちどおさま、です……」



なんとか岡持ちから注文品を取り出せたのは、もはや体にしみついた経験と仕事に対するプライドのおかげでしかなかった。



わたし今、マスクの下で、どんな顔してるんだろう。


たぶん営業スマイルとはほど遠いんだろうな。