かわいい戦争







繁華街から西に遠のいた外れ。

退廃した町並みの中に、ひとつ。


この街の支配者のごとく、派手やかにそびえ立つ館。




どでかい建物を前に立ち止まり、住所を何度も何度も確認する。


道に迷うことなく、2件目にたどり着いたはいいものの。

……出前先は間違いなく、ココ、だよね。



「あー……そっか、そうでしたね……」



物々しい豪華な洋館。
神雷のたまり場。



「そうだ、そうだった。忘れてた」



わたしは数回、出前でここに来ていたんだった。


神雷はいわばうちの常連さんなわけだ。



「あはは、はは…………笑えない」



出前のときは素顔だからあっちは覚えていなかったけど、今はばっちりメイクしてるし、なんだったらこのスカジャンでバレる。



面倒なことになってしまった。



ラーメンが冷めちゃう前にさっさと渡しちゃいたいのにー!!


これじゃあ、まんまと高身長の男の子に従ったみたいじゃんか!




『用があれば、たまり場に来てくれるってこと?』




学ラン肩かけ男の意味深な笑みを思い出し、ハッとなる。



「……よ、用って、まさかそういう……?」



持ってる岡持ちを一瞥して、ゆっくり洋館を仰ぐ。



いやいやいや!

神雷側が、わたしが出前の人って気づいてるわけない……よね?