でもね、その『かわいい』は
全部わたしのものだと言い張るには
少し語弊のあるものばかりなんだよ。
「そういえば、海鈴ちゃんってずっとマスクしてきてるよね。何?花粉症?」
「え、あ、これは……」
「あ、海鈴ちゃんも花粉症なの?実はあたしもなのー。この時期、辛いよね。まじしんどい」
「今は特にやばいよね。そりゃマスク常備するわ」
違うんだけどなぁ。
今更訂正するのもどうかと思い、とりあえず苦笑しといた。
顔の下半分、鼻先から下をすっぽり隠せるほど、サイズの大きな白いマスク。
これはわたしの必需品。
花粉症ではないけれど、欠かせないもの。
「あとさ、あとさ!」
「どんだけ質問するのさ。あたしら、海鈴ちゃんに夢中かよ。ウケる」
「だってさ、気になるじゃん」
「はいはい。で、次は何?」
「そのスカジャン!初めて見たときから、もうまじであたしのドストライクでさ!!」
「あー、そのスカジャンね。あたしも気になってた。スカジャンもそうだけどさ、身につけてる物がいちいちおしゃれなんだよね、海鈴ちゃんって」
「そうそう!センス良すぎ!」
とうに掃除はそっちのけで、わたしがブレザーの代わりに着てるスカジャンを指差された。
くすんだ青緑色のスカジャン。
背中には、なぜか真っ白な白鳥が刺繍されている。
これもマスク同様サイズが大きい。そもそもメンズ物だから、160センチしかないわたしにはなおさらでかい。
だけど、そのほうが都合がよかった。
わたしのお気に入り。