かわいい戦争




どうしてこっちを見てくるんだろう。


あ、もしかして、あんなはっきりデートを拒否したせいで傷つけちゃったとか……?



この男の子って性格はどうであれ、外見は芸能人並みに整っていて女の子に困ったことがなさそうだから、『嫌なんです!!』なんて堂々と宣言されたのが初めてで、ショックを受ける免疫がなかったのかもしれない。


だとしたらどうしよう。

デートはしたくないのは本心だけど、傷つけたいわけじゃないし。



謝ったほうがいいのかな。




「あ、あの、ごめ……」


「お前、俺とデートすんの嫌なんだ?」



たった数秒間の睨み合いを断ち切ったのは、意外にもあっちのほうで。


そのふてぶてしい表情は、どう見てもショックを受けてるようには思えなかった。



「んじゃあやっぱ、デートしねーとな」


「……え?」



解散の流れじゃなかったの?



「おら行くぞ」


「えええ!?」



再び腕を引っ張られ、スタスタと歩き出す。


さっきよりわずかに上機嫌になってるのは、気のせい?




「わ、わたしの話、聞いてました?」


「きーてたきーてた。だからお前連れて歩いてんだろ」


「だからの意味がわからないんですが……」


「他人の嫌がる顔を見んのって、最高におもしれーじゃねぇか」




……それは、つまり

わたしの嫌がる顔を見て、楽しみたいと?



話は通じても、根本的に何かが違う気がする。



ショックを受けてるとか傷つけちゃったとか、心配してたのがバカみたいだ。


さっき「ごめんなさい」と言い終える前に遮ってくれて助かった。こんな人に謝る義理はない。