おかしい。
この状況は絶対におかしい!
どうしてわたしが巻き込まれなくちゃいけないの!?
「あ、あの!わたし、璃汰じゃないですよ!?」
「知ってるわ、ボケ」
ここまでカチンとくる「ボケ」もなかなかない。
「じゃあなんでわたしが連れて行かれなきゃいけないんですか!」
「お前がちょうど近くにいたから」
そこに山があったから、みたいに言われても……!
それって「お前を利用した」と同義だよね。
デリカシーの欠片もない。
「さっきからなにイライラしてんだよ。生理か?」
「ち、違いますっ!」
「ならなんでだよ」
「あなたとデートしたくないんです!嫌なんです!!」
よ、よし!
よく言ったぞ、わたし!
心内で自画自賛すれば、いきなり高身長の男の子がピタリと静止した。
な、何だ。
次は何が起こるんだ。
急に引っ張られなくなるものだから、足がもつれ気味になる。
なんとか倒れずに立ち止まると、彼の無駄に美形な顔面が近づいてきた。
「ふーん?」
「……な、何です、か」
初めは見つめ合い……いや正確には睨み合いに強気に挑んだものの、彼の漆黒の双眼の威力には秒で負かされてしまう。



