かわいい戦争




身の毛がよだつとは、まさにこのこと。


嘘でしょ。

何この、全っ然嬉しくない偶然。


ていうか今、この男の子「あ」って言った?わたしのこと覚えてるの?こんな何の変哲もない、どこにでもいるような女子高生を?



嫌な予感がしてすぐさま目を逸らし、何ごともなかったように過ぎ去ろうとした。


……けれど、



「へっ?」



その予感は、見事に的中してしまう。


グイッ、と片腕を後方に引っ張られた。



「俺、今日こいつとデートすっから」



何を言ってるんだ、この人は。



「はあ!?」

「何それ!どういうこと!」



美女2人は当然の反応だ。

お怒りはごもっとも。
なんならもっと怒ってやれ。



「どうもこうも、お前らキーキーうっせーし、どっちか決めんのもめんどーだし。だったらこいつと一緒にいたほうが楽だろ」



謝罪もなしかい。

最低発言に、美女たちはすっかり意気消沈。



「行くぞ」


「え、ちょ、待っ……!」



呆然としている美女たちを残し、家とは逆方向へ連行される。


ほ、本当にデートするの!?

今から!?



いくら抗おうとしても男の子の力に敵うはずもなく、昨日と同様わたしの文句を聞いてくれるわけもなく。


高身長の男の子の気まぐれに付き合わされ、あっけなくわたしはまた神雷と関わってしまった。