かわいい戦争




総長、副総長、幹部……か。

神雷の上層部の役職のことだよね、たぶん。


ま、まさか、昨日会った人たちが……いや、現実逃避はやめて認めよう。絶対あの人たちだ。



でも、班メンバーの発言から鑑みるに、目撃するのは滅多にないことのようだから、あまり警戒しなくてもよさそうだ。


そもそも神雷側にとったら、わたしの存在なんて取るに足らないに決まってる。



昨日みたいな殺気を常に浴びるような危険極まりない生活をしたくはないし、今まで通り平和に過ごしていればなんとかなるだろう。




「誰を目撃したのさ」


「総長さま!すぐ横をね、こうスーッて通っていったの!やばいよ!いい匂いするし、足長いし、横からでも顔面がいいのがわかる!あれはやばい!」


「へぇ、そんなに?あたしも一回は近くで見てみたいわ」


「あれは見たほうがいい!まじでイケメンは国宝!!」


「あんなイケメンが不良でワルなのも、またいいよねぇ」


「わかるぅ~」




……わからない。


わたしはイケメンより、「かわいい」のほうが好きだな。




熱狂的に盛り上がる会話から外れて、1人黙々と手を動かし、掃除する。


おかげで昨日より大分早く掃除が終わった。