かわいい戦争



不機嫌な璃汰は、前に会ったときより痩せていた。


前、といっても1か月前くらいだろうか。

デビューが決まり、アイドル・リタとしての仕事が一段と忙しくなり、会う時間が全くと言っていいほどなかった。


昨日の連絡だって久し振りだったんだ。



まあ、わたしと璃汰が会うときは、大抵こういった頼まれごとが多いんだけれど。



でも、それにしたって痩せたよなぁ……。


元々細かったのに、それ以上痩せたら骨だけになっちゃうよ。




「なに、その変な顔」


「え?変?」


「メイクとかじゃなくて、表情」


「マスクしてるのに……わかるの?」




そういえば、璃汰、今日マスクしてない。


素顔さらしてていいの?

昨日ストーカー撃退してたばっかりなのに。



璃汰はすっぴんでもかわいい。


昨日の高身長の男の子と同じく、顔の造形が綺麗に整っている。



薄くメイクもしているのから、美しさに磨きがかかる。




つぶらなグレーの瞳は、ビー玉よりも透き通っていて。


素肌は雪のように白く、透明感にあふれている。


ぷっくりした唇はリップをしていなくても桃色なのに、赤リップでかわいさを増している。



顎先ラインほど短い、コテいらずのふんわりした天パは、よく色を変える。


前回会った春休みのときはターコイズだったけど、今は落ち着いたアッシュベージュだ。



うん、何色でもかわいい。

かわいいが過ぎる。




「わかるわよ。あなたわかりやすいし。てかまた変な顔してる」


「うそ!」


「ほんと」


「ど、どんな顔してた?」


「最初は、何か言いたそうなどんよりした顔。今は、ニヤニヤした気持ち悪い顔」




言い方がひどいなあ。