「ちょっとお客さん、うちの娘をビビらせないでくださいよ」
「あ、すんませんね。そんなつもりこれっぽちもなかったんですが」
「あははっ。はい、塩ラーメンに生ビール」
「おお、これこれ!これが食いたかったんだよ!」
きんきんに冷えた生ビールで喉を潤したあと、早速豪快に食べ始める。
麺をすする横顔に先ほどまでの不敵さはなく、食欲旺盛な成長期の少年のようにあどけなかった。
……やっぱり
わたしは神雷には関わらないでおこう。
なんか怖いし。
そのときは、結局行きつく先は同じだと、信じて疑わなかった。
わたしは何も、知らなかったんだ。
『だから君みたいな“いい子”は、神雷とはせめて関わるだけにしときな。居座っても、傷つくだけだぜ?』
その言葉の本当の意味も
不良の生きる世界も
何ひとつ、理解していなかった――。



