かわいい戦争



璃汰はずっと我慢していた涙を下まつ毛に浮かべていた。


もう。なんで泣いてるの。

うれし涙?


ポンポンと背中をさすってあげる。



今なら胸を張って言える。


異母姉妹(家族)とは名乗れなくとも、わたしと璃汰は誰より深くて大事な、友達。




『友達だから助けてんの?』

『リタちゃんみたいになるのは不可能』

『ブスはブスのまま』

『ブスは引っ込め』

『こいつがキャバ嬢にいてもリタちゃんと間違えねぇだろ』




「ブスじゃないわ」


「……璃汰?」


「この子はかわいいのよ」



涙を拭った璃汰が、ライブ配信を始めてから初めて仮面を外した。


凛とした眼差しで、力強くわたしの心臓をノックする。



「ここで証明してみせなさい。“かわいい”は作れる、と」



後ろに置いていたメイクポーチを受け取った。


ライブ配信でメイクすることに気後れしてしまうけれど、ためらうことはないよね。



いつも通りにやればいい。


毎朝のルーティーンを、ここで。



今から自分に

“かわいい”の魔法をかけて


エセお姫さまに変身するの。



小さな鏡を用意し、残ってるメイクを完全に落としてから時短メイクスタート。



おっ!有能アイテム見っけ!

てってれー!BBクリーム!!


日焼け止め・下地・ファンデーションをぎゅぎゅっとまとめられたBBクリームを、顔面の内側から外側に向けて大雑把に広げていく。スポンジでポンポンはたいてムラをなくす。


コンシーラーで軽く赤味やらくすみやら隠し、お粉で覆う。


慣れた手つきで眉毛を描く。

アイシャドウは……璃汰とおそろいにしようかな。


さっき璃汰に使った物と同じ色で目元を明るくする。


タレ目に見えるよう目尻にアイラインを引き、マスカラでまつ毛を盛る。


手際よくノーズシャドウとハイライトを入れたら、オレンジ味の強いピンクのチークをほのかに乗せる。



最後にカサついた唇にリップを塗って潤して、白いマスクを装着。