「守られるぅ?ははっ、まさか」
盛大に笑われた。
え、なんで笑われてるの?
笑うとこあった?
「言ったろ?誰より“悪い子”だったって。あいつはなぁ、一癖も二癖もあるやばい奴なんだよ」
「や、やばい……?」
「そう、やべぇんだ。頭も感覚も、強さも、な。規格外ってああいう奴のことを指すんだって、そいつを見て思ったね」
「そ、そんなにですか?」
「一回会えば君もわかるさ。あいつのやばさは相当だよ。あいつを守るなんてとんでもねぇ。むしろこっちを守ってほしいぜ」
悪口にも似た言葉を、タバコの煙と共に吐き散らす姿は。
あいつ、と呼ぶ声音は。
どことなく懐かしそうで、どこまでも朗らかだった。
「男だろうが女だろうが、あそこに棲む奴は大概フツーじゃねぇんだよ。だからお嬢ちゃんは、“いい子”のままでいたかったら居座るのはやめたほうがいい。まあ、元から“悪い子”だったってなら、話は違ぇけどな」
君呼びからお嬢ちゃんになったのは、年上からの助言を強調するためだろうか。
フツーじゃない。
“悪い子”の集う場所。
もしそれが本当なら、璃汰も……?
――どっちでも、いいや。
フツーじゃなくても、“いい子”じゃなくても。
わたしと璃汰の関係性は、一ミリも変わることはないのだから。
首元のチョーカーが、ほんのわずかに引き締まった気がした。



