璃汰は困ったようにはにかんだ。
「海鈴の言う通りよ。まろんには申し訳ないけど、あたしは天才なんかじゃないわ。余裕なフリをしてるだけ。あたしだって毎日がむしゃらに頑張らないと何もできないの」
「そんな、わけ……」
「そうなのよ。これが事実なの」
「謙遜、してるんですよね……?」
「いいえ。まろんとは一緒に何度もレッスンしてるんだからわかるでしょう?気づいてないフリをしてるだけでしょう?」
「う、そ……っ」
「……失望した?」
冗談めかして訊かれ、まろんちゃんは思わず口ごもる。
璃汰の長いまつ毛が影を落とした。
「必死に努力してやっと夢だったソロデビューが決まって嬉しかったけど、寂しくもあったわ。でも『オンナノコ*ソルジャー』の一員じゃなくなっても、そこがあたしの居場所で、まろんたちが仲間であることはこれからも変わらない。まろんがどう思おうと、ね」
居場所は手放すものじゃない。
増やしていくものだ。
璃汰の周りがいつか温もりでいっぱいになるといいな。
「……まあ、今回のことでデビューできなくなるかもしれないけど」
意地悪な皮肉にあからさまにたじろぐ。
そんなまろんちゃんの赤い頬をそうっと撫でた。
「さっきは叩いてごめんなさいね」
「っ、」
「あたしを不幸にしたかったなら、初めからそうやってぶつけてほしかったの。まろんは何も変わらないって言うけれど、そんなことないわ。記者や不良やアンチより、仲間に言われたほうがよっぽどこたえるもの」
上に吊り上げられてた血色の悪い唇が、ゆっくり下がって曲がっていく。



