かわいい戦争




「……あ、たし、は、ただ……」



かすれたソプラノは雨音にじんわり馴染んでいく。


空っぽになった手のひらを握り締める。

力のない手ではどうやったって指先が手のひらにつくことはない。



「リタ先輩を、許せなかった、だけ。ほんの少し不幸を味わわせたかっただけ……!」



ふと璃汰の頭が上がった。



「……璃汰?」



何も言わずに璃汰は立ち上がる。


よろめきながらもまろんちゃんに近づいた。



「なのに、なんで、あたしがこんな目に遭わなくちゃいけな……」



――ペチンッ。



声が途切れた。

まろんちゃんの白い頬に赤味が帯びる。



「……りったんが、ビンタ、した」


「アイドルの顔に、容赦なく……」



呆然とするひつじくんと未來くん以上に、まろんちゃんのほうが何が起こったのか理解できないようだった。




「リタ先輩……今、何し……」


「頬を叩いたのよ」


「なんで……」


「まだわからないの?」




心も身体もボロボロで、フラフラで。

いつ倒れてもおかしくないのに。


まろんちゃんと向かい合ってる璃汰は、そう感じさせないくらい自分の足でしっかり立って。



ひどく悲しげに怒ってる。