注文をそっくりそのままお父さんに伝言する。
はいよ、とそれだけ返ってくれば、もう大丈夫。
「そういえば、海鈴」
「なあに?」
「今日帰り遅かったな。何かあったのか?」
こういう世間話をしても許されるのは、お父さんのお店だからか、このお店の気楽な空気感のおかげか。
お客さんのほとんどが、元から親戚だったみたいに親しく話しかけてくれるから、わたしとお父さんがこんな風に喋っていても誰も不快には思わない。
そんなこのお店が、わたしは好きだ。
「買い出し行ってたのと……あー、えっと……」
「何だ?」
「……じ、神雷のたまり場に、行ってた」
「なんでまた、そんなところに」
「いやちょっと、成り行きで?」
苦笑するしかない。
わたしだって行くつもりなんか微塵もなかったよ。
でも無理やり連行されちゃ、どうしようもないじゃん。
「ふはっ」
失笑したのはお父さんではなく、なぜかオリーブ色の髪の男前なお客さん。
「そうか、君が神雷のとこにねぇ……」
「あ、あの……?」
「あ、いや、悪い。ちょっとおかしくてな」
やっぱりおかしいよね。
こんなわたしと、神雷なんて。
組み合わせが謎すぎる。



