逃げたと思ったわたしが全速力で接近してきたことに、記者は少なからず動転していた。
ザアザア、屋根を叩く雨音に合わせて、スニーカーで地面を叩く。
距離も速さも、助走は完璧。
あとは跳ぶだけ!
記者を通り過ぎて、スピードを落とさずにダンボール箱に飛び乗って。
そのまま一番上の箱を踏み切った。
「いっけ……っ!」
茶色い頭に右手を置けば、ズン、と重みで記者の体が少し縮む。
左手で器用にショルダーストラップを絡め取り、記者の頭上で倒立しながら背筋を反らしていく。
意表を突かれた記者の手は力が抜け、カメラを容易に盗めた。
「っ、……よっと」
よろめいちゃったけど、着地成功!
カメラも無事にゲット!やった!
授業で挑戦した前方倒立回転跳びを覚えててよかったぁ。
「カメラのデータ、消さなくちゃ!」
急げ、急げ!
……って、どうやって操作すればいいの!?
このボタンかな?あ、こっちかも。
データデータ……あっ、出てきた!
「これを全部削除……きゃっ!?」
いきなり右肩を掴まれた。
「クソアマがっ!!」
「っ!」
こめかみに青筋を立てた記者が、わたしの胸倉を掴みかかる。
まだデータを消せてない。
奪い返されるわけにはいかない。
「カメラ返せ!!」
嫌だ!
カメラを両腕で抑え込んだ。
記者の思惑通りなんかにはさせない。
恐怖心よりも璃汰を救いたい気持ちのほうがずっと大きいんだから!



