かわいい戦争




20歳くらいの男前なお客さん。



オリーブ色の長髪は、後ろでポニーテールにしている。

左のこめかみにはイナズママークの形が彫られていて、どこかいかつそう。



相反して、左耳に付けてるシャープなピアスはひどく華奢だ。


あのピアスの先端にあしらっているのは、小さな宝石。

ダイヤモンドのような輝きを放っていてとても綺麗。


男の人がそういうピアスをしているのが意外で、彼女さんからのプレゼントだろうか、とついつい勘ぐってしまう。



カウンターの端っこに座ったお客さんに、お水を注いだコップを置き、注文を伺う。




「いつもの」


「はい、塩ラーメンですね」


「…………」


「えっと……違いました?」




自信あったんだけどな。

黙り込まれて自信喪失してきた。


ためらいがちに聞いてみたら、深い緑色の瞳がやわく細められた。




「違う違う。試しに言ってみたらドンピシャに言い当てられてびっくりしただけだ」


「あ、なんだ。それならよかった」


「塩ラーメンと生ビール、よろしくな」


「はい、かしこまりました!」




口元の下のほくろも一緒に持ち上げられた。

この人は、こんな優しく笑うんだ。