何かあったのなら、一体何が……。
――プルルル、プルルル。
また、着信音。
次はわたしのスマホが鳴ってる。
画面には『璃汰』の文字。
未来くん、そしてわたし自身が温めた手のひらが、いやに汗ばんでいく。
浮ついた感情ごと急激に白んで、沈んで。
不穏な予感を誘い込む。
無事に家を出れて、レッスンに間に合いそうという報告ならいいんだけど。
「も、もしもし?璃汰?」
『海鈴っ!』
焦って震えた声色に、予感が確信に変わった。
いい報告ではなさそうだ。
『たすけ……っ、ちょ、やめ……!』
ゴンッ!!と何かがぶつかった音とノイズが、鼓膜を刺激する。
何!?
何が起こったの!?
「璃汰?璃汰!?どうしたの!?」
『ちょっとぉ、勝手に連絡しないでくださいよ』
「!?」
璃汰じゃない。
だけど知ってる。
この声は、
「ま、まろんちゃん……?」
「オンナノコ*ソルジャー」のファンであるわたしが、聞き間違えるはずがない。
癖のあるかわいらしいこの声は、紛れもなくまろんちゃんのもの。
『あは、わかっちゃいました?声だけでわかるなんてすごいですね』
「なんでまろんちゃんが……」
『さあ、なんででしょうね?』
面白半分にからかってるみたいな口調が、いやに癇に障る。
かすかに『海鈴!』と乞う叫びを拾い取った。
『黙ってください、リタ先輩』
再度ゴンッ!!と鈍い音が轟いた。



