来ちゃった、なんて、言わないで。
反則だよ。
そうやってまた、わたしを好きにさせる。
「信じてないわけじゃないんだよ?ただ心配だったんだ」
ホッとしてる。
本当は1人で対処しなきゃいけなかったのに。
未来くんと会ったら、緊張が解けてしまった。
「わたしがここにいるってよくわかったね」
「たまたまあいつらがこっちに走ってくるのが見えたんだ~。この空き家の中に入ったら海鈴ちゃんの声がしたから、裏口から引き入れて正解だったよ」
今日も未來くんに助けられちゃったな。
まるでヒーローみたい。
「ありがとう、未來くん」
「海鈴ちゃんが無事でよかった~」
ホッと胸を撫でおろす未來くんに、そっとハンカチを当てる。
滴る雨粒に混じって、汗がじんわり滲んでいた。
肩にかけてる学ランは、落ちないように袖を胸元できゅっと結んでいた。
走ってここまで来てくれたの?
わたしのために?
どうしようもなく期待してしまう。
未來くんの中で、わたしの存在が大きくなってるんじゃないかって。
勘違いも甚だしい。
「海鈴ちゃんは、優しいね」
「……優しいのは、未來くんのほうだよ」
ハンカチを持つ手を、未來くんの手が包み込んだ。
雨で冷えた指先を温めるように、ぎゅっと強く。



