かわいい戦争



願いに反して、灰色の空からはとうとう雨が降ってきた。


ポツポツ。

フードを濡らしていく。



ちょうどいいかもしれない。


きっとこの雨で、わたしの素顔をぼやかせる。



「それじゃあ、璃汰のことよろしくお願いします」



返事を待たずに、一歩踏み出した。


物陰に潜めていた姿を、マスコミが捉える。




「おい、あれって……!」

「嘘だろ。いつの間に!?」

「フードとマスクが邪魔だが、間違いない」

「リタだ!リタがいるぞ!!」




よし、引っかかった。



長年のメイクの勉強が役に立った。


わたしの“かわいい”はちゃんと武器になってた。



マスコミの群衆からやや距離のある場所でわざとらしく立ち止まり、そちらを軽く一瞥してからまた走り出す。


鬼さん、こちらへおいで。


見事に騙された群衆が、慌ててわたしを追いかけた。



その間に神雷の皆はアパートの裏手に回る。


それを確認したあと、大勢のマスコミから逃げることに専念する。



全員が全員わたしの後ろに引っ付いて追いかけ回すわけではなく、先回りしたり挟み込もうとしたり、あの手この手で捕まえようとする。


あっちは人数が多いし、厄介だ。