――神雷。
この街に住んでる人間なら、誰もが一度は耳にしたことのある、とても有名な名前。
この洋館を拠点とし、関東を中心に支配力を高めている、最強の暴走族。
暴走族といっても、悪さをしたり無作為に傷つけたりはしていない。
むしろ逆。
神雷はこの街を守る、いわば自警団のような組織だ。
だから不良でも、この街の住人にとっては評判が高い。
そのうえイケメンぞろいだから、特に女の子に人気だ。
神雷以外の不良は、トップを背負う神雷に恐れと憧れを抱いてる。
ときどき喧嘩が勃発するものの治安自体は昔より断然よくなったらしい。神雷の存在自体が治安悪化の抑制に貢献しているんだ。
そんな神雷のたまり場に、成り行きで来ちゃったわけだけど……。
「どうかしたか?」
硬直するわたしを不思議に思ったのか、低身長の男の子が顔を覗き込む。
どうかしてるよ。
最初からずっと。
マスクの下では、頬肉が引きつりっぱなしだ。
さっきのストーカー犯らしき男性を相手にしていたとき、彼らの強さと殺気を目の当たりにして、察してしまった。
この2人は……おそらく奥にいる2人も。
この神雷の上に立つ人間だ。



