あと半分。
途中まで伸ばされた璃汰の手は、ハッと我に返った途端に、すがろうとした指先を自分の手の中に隠してしまった。
「……嫌い。大嫌いよ」
まだ、手と手は重ならない。
「今まで誤解される行動を取ってただけでなく、言葉も足りなかった。嫌われても仕方ないわ。……だけど、璃汰がわたしを嫌いでも、わたしは璃汰が好きよ。大好きよ」
「好き、なんて、今更……っ」
先に目を逸らした璃汰は、もどかしげにリンカさんに背を向ける。
出入口へ歩き出す背中を慌てて追いかけた。
「待って、璃汰!」
外へ続く通路のところでようやく追いついた。
歩くの速いよ……。
「璃汰」
「……何、よ」
「無理しないで。強がらないで」
「は……?」
璃汰の正面に回って、璃汰の顔を窺う。
案の定泣くのを我慢していた。
引きつった両頬に触れて、目元を親指でなぞる。
「璃汰は璃汰のままでいい。嫌いなら嫌いなままでいい。変わってもいいし、変わらなくてもいい。璃汰の気持ちは璃汰のものなんだから」
「っ、」
「リンカさんも言ってたじゃん。『今すぐに許さなくてもいい。受け入れなくてもいい』って。信じられないなら、信じなくていいんだよ」