「わたしは心から璃汰を愛してる。あなたを世界一幸せにしたくて、必死に働いてお金を稼いでた。それがあなたのためだと思った。だけどそのせいで見捨てたと誤解され、寂しい思いをさせてしまってたなんて……ごめん、ごめんなさい、璃汰」


「……信じない。信じられないわ」


「今すぐに許さなくてもいい。受け入れなくてもいい。これから少しずつあなたに愛を伝えていくから。もう寂しい思いはさせない。不幸にもさせない。あなたの居場所はわたしのそばにあるって、信じさせてみせる」


「……っ」




ゆらり、ゆらり。

揺れてるのは、璃汰のほう。


夜空よりも淀んでいたグレーの瞳には、いつの間にか月明かりが灯っていた。


せっかく取り戻した輝きは淡く霞んでる。



鼻の先が赤いのも、親子おそろいだ。



「だからどうか、今はまだ、わたしを拒絶しないで。わたしは璃汰と本当の家族になりたいの」



2人の距離を埋めるように、リンカさんが手を伸ばす。



すれ違うのはもうやめにしよう。

誤解は解けるうちに解かなくちゃ。


本音は溜め込むものじゃない。



4つの爪痕を刻んだ手のひらが、たどたどしく伸びていく。


白くて冷たい指先は、温もりを求めていた。