一度閉じた瞼を持ち上げ、今度こそしっかりと目を合わせた。
不安定に揺れながらも見据える。
もう逃げない。
声に出さなくても、その想いが伝わってきた。
「璃汰、あなたはわたしの宝。わたしのかけがえのない娘よ。存在を消したいとも、いなくなればいいとも考えたことはない。あなたはわたしの唯一の光なの。生きる意味なのよ。あなたがいなければ、わたしは幸せにはなれないわ」
2人の微妙な距離は、心の距離。
たった2人の家族なのに、関係はこじれて絡まって、一筋縄ではほどけない。
璃汰が生まれる前から、溝があったせいで。
「確かに璃汰の言う通り、わたしは何度謝っても許されない罪を犯した。たくさんのものを失った。お腹に璃汰が宿ったと知ったとき、正直産むか悩んだわ。本当は産んではいけない子だったのかもしれない」
「やっぱり……」
「でもね、わたしは産みたくて産んだの。あなたの親になりたくて、あなたを愛したくて、命がけで産んだのよ。神様がくれた贈り物を放り捨てたくなかった。あなたを産んで育てることが、償いのひとつだと思ったの」
「…………」
「あなたを見る度に罪を思い出して、悔いてるのは本当よ。だけど、あなたを産まなければよかったと後悔したことは、一度だってないわ。これから先も絶対にない」
眼差しも、声音も。
強い意志を持ち、真っ直ぐに届く。
それでも震えたままなのは、涙腺がたるんでるせい。



