「海鈴!!」
後ろから呼びかけられ振り返ってみたら。
「な、な、な……!?」
なんで!?
入口から璃汰がズンズン近寄ってきていた。
黒いマスクを外せば、真っ赤な形相があらわになる。
「な、なんで璃汰までここにいるの!?仕事は!?レッスンは!?」
「俺が呼んだ」
犯人はあなたでしたか、天兒さん。
「『キャバクラであいつがやべーよ』って連絡が来たから、わざわざレッスンを抜けて来てやったのよ!」
ちょっとちょっと!
いい仕事したぜ、とでも言いたげなしたり顔やめてくれませんか、天兒さん!?
「海鈴こそどうしてこんなところにいるのよ!」
こんなところ。
卑しそうなのが簡単に汲み取れた。
……違うのに。
ここはとてもいいお店なのに。
「しかもあいつとなんて……」
「っ、璃汰……」
蔑んだ目つきに、リンカさんは悲しげに瞼を伏せる。
璃汰は視界に入れることすら嫌そうに顔を背けると、わたしの手首を掴んだ。
「さっさと帰るわよ。こんなところにいたって汚らわしい匂いがつくだけよ」
「待って、璃汰!」
手首を掴む璃汰の手を握って、強引に引き留めた。



