リンカさんは震える唇を、同じく震える手で覆った。
「あ、あ……わたし……わたし、あなたに、っ……あなたたちに……」
さっきお客さんが言っていた。
『店のために、「あの子」のために、自分の過ちを償うために、毎日身をすり減らして戦ってる』
何があっても絶やさなかった笑顔の裏で、今までずっと罪意識に苛まれて、懺悔し続けていたんだ。
過去をやり直すことはできないから。
失敗をなかったことにはできないから。
だから。
「ごめん……ごめんなさ……っ」
「リンカさん!」
「っ、」
やっとちゃんと視線が交わった。
怯えないで。
謝らないで。
わたしには「許す」も「許さない」も告げる権利はない。
だって、わたしは。
「わたしはリンカさんに何もされてません。リンカさんが謝る相手は、わたしじゃない」
知ってるだけ。
リンカさんの罪を。
それがちょっと憎くて、苦しいだけ。
何も知らなかった中学生のわたしに『仮初めの幸せ』と璃汰は非難していたけれど、わたしは今でもあのときの幸せも本物だったと胸を張って断言できるよ。
もちろん、全て知った今も、幸せ。



