ごめん、璃汰。
わたし、やっぱり、この人が悪い人だとは思えない。
璃汰の話を信じられないよ。
「だけどどうしてこんなところに?あ、もしかしてライバル店のスパイ?」
「違いますよ~」
未來くんが締まりのない口振りでやんわり否定する。
するとわたしを前に押し出した。
「海鈴ちゃんがあなたに確かめたいことがあるそーなんですー」
「……え?」
そうだ、訊くなら今しかない。
「あ、あの……!」
「……あなた、」
勇気を振り絞って顔を上げれば
瞠った双眼がぐらついていた。
「『ウミ』が名前じゃなかったの?」
「あ、はい。わたし、本名は素野海鈴っていいます。さっきお客さんに騙すなとか言っておいて言いづらいんですが、騙すような真似してすみません!でもわたし、どうしてもリンカさんに……」
「……その、かいり……」
「リンカ、さん……?」
セクハラまがいなことをされても微動だにしなかった鉄壁の仮面が、ボロボロと砕け落ちていく。
涙が浮かんでいないのが不思議なほどに、可憐な花が褪せて、しぼんで、歪む。
もう目の前に、笑顔は咲かない。



