媚を売ってる印象はなかった。


ナンバー1である余裕なのか経験によるものなのかは定かではないが、特別繕った態度をしていないのは一目瞭然で。


お客さんと話す表情、お酒を作る手つき、感情を表す仕草。

どれもが自然体で、美しかった。




「……ん?この子たちは?」



お客さんに先に気づかれた。


あ、やばい。

つい見入っちゃって、声をかけ忘れてた!



「見ない顔ね。新人かしら?」


「は、はい。え、えっと、わたし……う、ウミといいます!」


「ぼ……わ、わたしは、ひ、ヒイです」



わたしが、ウミ。
ひつじくんが、ヒイ。

ここでの名前、適当に決めちゃったけど大丈夫かな。



「2人ももてなしてくれるのか!ははっ、両手に花だな!」



ドキドキしていたけど、不審がられなくてよかった。


なんとかリンカさんと同じテーブルに居座れる。



問題はここから。

真実を確かめるには、リンカさんの家族事情を聞き出さなくちゃいけない。


だけど、キャバ嬢という立場なんだから、たぶん子どもがいると公言はできないだろうな。



……どうしよう。

策が浮かばないよ!