「あのな、俺だってこんなめんどくせーことしたくねぇんだよ」
高身長の男の子がしゃがみこんで、一眼レフカメラの元々の持ち主の前髪をグイッと強く掴みかかった。
うわ、痛そう。
何本か髪の毛が抜けていた。
「ただあいつがどうしてもって頼んできやがるから、仕方なくやってんだ」
わたしを親指で示しながら、そう告げることすら面倒そうに表情筋を軋ませる。
いやいや。
わたしは決して頼んでませんけど。
なんて心の中で否定しておくが、もちろん彼には届いていない。
「そもそも、だ。こんないいカメラ使うくれーなら、尾行も盗撮ももっとうまくやれよな」
「……は……?」
「つーか、撮り方下手くそすぎんだろ。これとかブレブレだしよ。カメラがもったいねぇだろーが」
ポカンとする男性をよそに、高身長の男の子は空いてる手でカメラを操作し、データを見ていく。
ここからじゃいくら覗こうとしても、わたしにはカメラの中の写真を見ることはできなかった。
「やっぱもらってい?俺のほうがぜってーうまく使いこなせる」
「やめろって」
ため息混じりに、低身長の男の子がストップをかけた。
チッ、と舌打ちがこぼされる。
それだけで人を一人殺したようなオーラが出るからやめてほしい。



