かわいい戦争




「だけど、好きでも、ない」



あ、また。

昼休みのときと同じ。


苦しくて仕方ない、曇った表情をしてる。


無理してるときの顔だ。



「好きになっちゃ、いけない」


「どうして……?」


「僕は、男だから。“津上ひつじ”だから」



シャンデリアの眩しい光のせいだろうか。


綺麗な双眼が潤んで見える。



「僕に、“かわいい”は、要らない」



視線がわたしを外れて、すぐ横にある色とりどりの衣装に移された。


拒絶してるようには感じられない。

むしろ愛おしそうなのは、単なる気のせい?



「わたしは、さ」



ひつじくんが一瞥した側の衣装のほうへ寄り、何着か触れてみる。


真っ白なブラウス。
ピンクのカーディガン。
チェック柄のパンツ。

どれも良さがあって、かわいい。



「かわいくなっちゃいけない人も、“かわいい”を好きになっちゃいけない人もいないと思う」



男の子も女の子も、子どもも大人も関係ない。


誰にでも“かわいい”は在る。



「誰だってかわいくなっていいし、誰でもかわいくなれる」



ひつじくんはよくメイクやヘアアレンジの変化に気づいて、「かわいい」って褒めてくれるよね。


そのときのひつじくんは、キラキラしてたよ。



「かわいくなって、いいんだよ」