パチクリと瞬きをしたら、ポロリ。
ひっこめようとした涙が1粒、こぼれ落ちた。
マスクを濡らす前にそっと雫を拭う、ひつじくんの人差し指。
「ごめんね」
「こ、この涙はひつじくんのせいじゃないよ?」
「わかってる。そうじゃなくて、昼休みのこと。ずっと謝りたかった」
昼休みのこと?
思い当たる節がない。
わたし、ひつじくんに何かしたっけ?
「潜入、1人でさせて、ごめんね?」
「あー、そのこと!謝らないでいいのに。元々1人でするつもりだったし」
もしかしてずっと気にしてたの?
優しい優しいひつじくんからモヤモヤを取り除くにはどうしたらいいんだろう。
「ひつじくんが嫌なことを、無理やりさせたくないよ」
本当は、謝らなきゃいけないのはわたしのほう。
わたしもちょっと想像しちゃったんだ。
ひつじくんの女の子姿。
美人な顔立ちをしてるからかわいい格好もすごく似合いそうだな、ってついイメージしちゃってごめんね。こういうのもきっと嫌だよね。
「……嫌じゃ、ないよ」
うっすら音の乗った呟きは、あっけなく溶けていく。
でも聞こえた。
わたしの耳には、ちゃんと届いた。
「かわいいものは、ほんとは、嫌いじゃない」
嘘じゃない。本心だって、わかるよ。
ゆらゆら泳いでる眼差しが、教えてくれた。



